餅
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餅(もち、英:Mochi, Rice cake)、モチ、もちとは、もち米を加工して作る食品。丁寧な、または上品な表現としてお餅、おもちとも。
粒状の米を蒸して杵で搗いた搗き餅(つきもち)と、穀物の粉に湯を加えて練り、蒸しあげた練り餅(ねりもち)の二種類に大別される。日本で餅といえば一般に搗き餅を指し、練り餅は団子という別の区分とされることも多い。
目次
1 字と文化
2 つき餅(搗き餅)
2.1 歴史
2.2 材料
2.3 形
2.4 餅つき(餅搗き)
2.4.1 餅のつき方
2.4.2 道具・機器
3 練り餅
4 主な餅の種類
4.1 基本となるもち米をついて作る餅
4.2 もち米をついて作る餅とその餅を利用した料理
4.3 もち米の粉を練って作るもの
4.4 うるち米を使うもの
4.5 デンプンを用いるもの
4.6 小麦粉を用いるもの
4.7 その他の材料のもの
5 主なつき餅料理
5.1 からめるもの
5.2 つき込むもの
5.3 非常食
6 食べない餅
7 事故
8 製造
9 餅に関する慣用表現
10 脚注
11 関連項目
12 参考文献
13 外部リンク
字と文化
イネ科の植物の果実である穎果は小粒で、1つ1つが籾に包まれ、さらに加熱加工しにくい果皮が包み、これらの除去を大量に行う必要があるため食用とするには技術と手間がかかる。これは穀物を杵などで叩く(「搗(つ)く」という)ことで除くことができる。このような加工の初期段階では、コメにおいてもおそらく他のイネ科の穀類と同様に粉状にし、水とともに練ってそのまま食したと考えられる[1]。やがてコメの煮炊きが始まり、さらにコメは小麦や大麦などよりも吸水性がよいことから粒食が発達することになるが、原始の形のコメの食法は神饌として残り、日本ではこれを「粢(しとぎ)」と言った[1]。日本語の「モチ」の語源について、古語の「モチヒ」「モチイヒ」(糯飯、黐飯)から、または望月の形状から、など諸説ある。
中華文明圏において、「餅(ピン)」は主に小麦粉から作る麺などの粉料理(麺餅)全般を指し、焼餅・湯餅(饂飩・雲呑・餃子の原型)・蒸餅(焼売・饅頭の原型)・油餅などに分類され[2]、小麦以外のヒエ、アワ、コメなどの粉から作るものは「餌(アル)」と呼んで区別があった。「餌」を蒸した「餻(カオ)」、小さいものを「円(ユワン)」、他の食材を包んだ「団(トワン)」、日本で知られる飯粒を搗いたいわゆる餅は「餈(ツー)」と呼んだという[3]。日本ではこの「餈」に相当するものが他の食材と合わせて多様な「餅」に発展した。朝鮮でも「떡(トック)」といい、東アジア圏では現在も節会や縁起、祝賀行事など特別な節目に饗されることが多い。
日本が統治していた歴史がある台湾では、日本語の「もち」を音訳し、台湾語でmôa-chî(モワチー)と呼び、それに「麻糬」などの漢字を当てる。客家や一部の菓子店に搗き餅の伝統を残しているが、それ以外の人は練り餅が主流で、どちらも「麻糬」と呼ぶ。近年、台湾風の「麻糬」を中国大陸の方でも売るようになってきている。
つき餅(搗き餅)
日本ではもち米を用いて作る餅が一般的である。製法は、まずもち米をといでから十分に水に浸しておいた後に、水気を切り、蒸し布で包んで蒸籠等で蒸す。次に、蒸したもち米を杵と臼で米粒の形がなくなるまでつき、下記の「主な餅の種類」に記載される形状に成形する。最後に、それらを味付けしたり、餡やきな粉をつけて食べる。
中国の広東省、福建省、江西省などや台湾にすむ客家[4]や湖南省西部の漢族や貴州省、ラオスなどのミャオ族(モン族)などには杵と臼で作るつき餅がまだ残っている。餅つきは中国語で「打糍粑」(ダーツーバー、dǎ cíbā)と称し、親戚や近所の人があつまって行う行事となっている。
この他に、蒸したもち米を使うものとして、中国にはもち米を底の浅い器に敷き込み押し固め、半分潰したようにするものもあり、「糯米糕」(ヌオミーガオ nuòmǐgāo)、「糯米糍」(ヌオミーツー nuòmǐcí)などと呼んでいる。加工法としてはぼた餅(お萩、半殺し)に近い。いずれも「餅」という字を用いないのは、「餅」は主に小麦粉を使って円盤状に加工した食品を指すためである。
日本では家庭用の餅つき機が販売されており、羽根で叩きながら練る構造のものが多いが、練り餅よりもつき餅として認識されることが多い。大規模な工場の餅つき機では、杵と臼を備えた構造のものもある。
歴史
古来から日本では、稲作信仰というものがあり、特に平安時代から朝廷に推奨され顕著になった。これが現在でも受け継がれ、正月などのハレの日の行事には欠かせない縁起物の食材となっている。このため、米などの稲系のもので作った餅が簡便で作りやすく加工しやすいことと相俟って、多様なつき餅の食文化を形成している。
考古学の分野では、間壁葭子が古墳時代後半(6世紀頃)の土器の状況からこの頃に蒸し器の製作が社会的に普及したと判断し、日常的に蒸す調理による食品の種類が増し、米を蒸す事も多くなり、特に餅を作る事も多くなったと考えている[5]。ただし、蒸し器の普及には地域差が見られ、佐原眞の『食の考古学』(1996年)によれば、6世紀時点の西日本では土器の状況から蒸す調理より煮炊き中心で、蒸す食物(餅も含む)はハレの時に用いられたとし、むしろ東日本の方が蒸す調理用土器が普及していたとしている。
日本における餅に関する記述として、『豊後国風土記』(8世紀前半)には次のような内容の話が語られている。富者が余った米で餅を作り、その餅を弓矢の的として用いて、米を粗末に扱った。的となった餅は白鳥(白色の鳥全般の意)となり飛び去り、その後、富者の田畑は荒廃し、家は没落したとされる。この記述は、白鳥信仰と稲作信仰の密接な繋がりを示す証拠として語られ続けている。また、この記述自体が古来から日本で白鳥を穀物の精霊として見る信仰があった事を物語っている[6]。
『大鏡』(11世紀末成立)では、醍醐天皇(9世紀末から10世紀初め)の皇子が誕生してから50日目のお祝いとして、「五十日(いか)のお祝いの餅」を出された事が記述されている。また、「孫の公成に目のない、老いた公季」の条においても、「誕生五十日の祝いに、赤子(公成)の口に餅を含ませた」とあり、天皇家や貴族の間では、生後50日目(2ヶ月しない内)に餅の味を覚えさせた事が記録されている。
『吾妻鑑』の建久4年(1193年)5月16日条に、「三色餅」の記述がある。それによれば、黒・赤・白の三色の餅とあり、12世紀末の時点で、白色以外の色餅が作られていた事が分かる。左に黒色餅、中に赤色餅、右に白色餅を置き、それぞれ食され、最後に重ねられ、上段に黒色餅、中段に赤色餅、下段に白色餅とあり、それを山の神に供したとある。形状についての記述はないが、長さ8寸(24センチ)、広さ3寸(9センチ)、厚さ1寸(3センチ)とある。鏡餅や菱餅と同様に餅を重ねると言う行いは鎌倉時代(中世初期)より確認できる。
民俗学的見地からは、東国では正月行事の中で餅を忌避して食べず、サトイモやヤマイモを食べる習俗の方が重要な意味をもって分布しており、この東西の差異は、西が水田稲作に対し、東が焼畑による生産圏であり、それと結び付いた行事の為と捉えられている[7]。従って、近畿圏と比べれば、餅が東国各地の正月行事で用いられ、普及するのは後になる。これはハレの食物としての餅が全国一様に普及するまでには(生産圏の差異から)地域差があったことを示す。また、普及した後も、『餅の四角い東と丸い西』(宮本常一著作集13)の考察にあるように、東西日本では餅の文化は異なる歴史を歩んできた。
材料
現在日本で市販されている餅には、原材料にもち米をそのまま使ったものともち米粉を使ったものとがある。前者と後者では販売価格が大きく異なり、前者が高い。食味・歯ごたえを左右する腰の強さ・焼いた際の膨れ具合・煮た場合の溶け具合・伸ばした時の伸び具合や粘り具合等についても前者が勝るとされる。廉価なつき餅にはもち米粉に馬鈴薯等のデンプンを加えたものさえある。
また、マッチ箱程度の大きさのつき餅1個で飯茶碗1杯分のカロリーがあることや、個包装され保存が利く袋詰め商品であること、簡単に入手できることなどから、災害時の非常食としても重宝されている。
形
もち米をついた後に、保存するための形成方法は地方によって異なる。ついた後の餅を板状にした「伸し餅」を切り分けた「切り餅」または「角餅」が主流の地方と、ついたもちを円盤状に丸めた「丸餅」が主流である地方がある。
餅つき(餅搗き)
搗き餅をつくることを餅つき(もちつき)といい[8]、糯米を蒸し臼の中に置き杵で繰り返し叩く[注 1]。多くは正月、節句、祝い事などでつく[9]。また、餅つきは、ある程度の人数分をまとめてでないと行いづらく、大人数が集まって作ることが多く、年中行事、祭り、神事などの場で行われることになっていることも多い。餅は神道や仏教の供物としても用いる。(鏡餅、菱餅など)近年、餅を機械化された工場で「餅つき機」を用いて製造する業者が増え、一年を通してスーパーなどの棚に餅が並ぶようになっており、また家庭用の餅つき機も普及しつつあり、餅を日常的に食す人も増えた。
つきたての熱い状態の餅は不定形で粘り気があり、他のものに付きやすい食べ物である。常温になると固まるので、円盤状や球状にしたり、板状にして保存する。保存形状により丸餅、伸し餅(のしもち)、切り餅などと呼び分けられる。できたてのものは、きな粉をまぶしたり、醤油などの付け汁に入れてくっつかないようにして食べる。味付けの仕方により、きな粉餅、醤油餅などと呼び分けられる。また、さまざまな材料を混ぜ込むものもあり、よもぎ餅、豆餅、海老餅などと呼び分けられる。保存したものは、焼いたり、煮たり、揚げたりし、再び加熱してから食べる。加熱方法により、焼き餅、揚げ餅などと呼び分けられる。
一般に年末の12月29日は「苦を搗(つ)く」音韻から九日餅(くんちもち)と呼び、年の暮れの数日間のうちその日だけは餅をついたり購入を避けたりする風習がある一方で、二九を音韻からフク(福)と読み29日を迎える地域もある。
1974年に小型の電動(自動)餅つき機が普及し[10]、一般家庭で古典的餅つき風景を見ることは少なくなったが、自治会や子供会の行事としては今も人気があり、歳末の風物詩となっている。電動餅つき機は大量の餅を作る精米店や餅菓子を販売する和菓子店、高齢化が進んだ農家等で人手が足りず人力による餅つきができなくなってきた場合により多く利用されている。杵(きね)と臼(うす)でつく機構の機械は商業化された場合に多く、小型のものは蒸した米をメーカー独自の特殊形状のヘラで練り、十数分でついた餅と同じ状態になる。ヘラで練る方式の機械で作った餅は、杵つき餅と比べて細かい気泡が多く含まれ、雑煮に入れた場合に柔らかくなりすぎる、伸ばした時の表面の肌目の細かさなどといった食味の違いがあるが、一般には杵と臼でつく餅を比較する機会が少ない理由から、同等の食味を持つものとして扱われている。
餅のつき方
- 餅つきをする前に、杵の頭が欠けたり木片が餅に入るのを防ぐために、水を張った桶(おけ)の中に杵の頭を漬けて水分を含ませておく。木臼の場合はよく洗い、臼に水を張って水分を含ませておく。乾いた状態のまま杵でつくと臼が割れる場合がある。なお、木臼や石臼を設置する際には杵でつく作業が行いやすいように高さを調整し、高く調整する必要がある場合には専用の木台などを用いて調整しておく。
- もち米は水洗いし、6 - 8時間程度水に浸し、ザルに開けて水切りをする。
- 蒸し器の蒸篭に清潔なサラシやサラシより粗めの蒸し布を敷き、水切りしたもち米を開けて蒸し布でくるんだ後、蒸す。炊けた状態は、蟹(かに)の穴と呼ばれる孔が表面に見えるか、箸を挿してもち米が付着しなければ良いとされるが、米の芯が残っていない赤飯程度の固さに炊けていれば良い。
蒸し器がない場合は炊飯器のもち米の指標を選択すれば足りる。 - 炊けたもち米は蒸し布に包んだまま臼の中にあける。この時の米の状態は祝いごとの時に食べる赤飯と同じか、若干固い程度である。
- 臼にあけたもち米は、臼の外周に沿って杵の柄を腰に当てるか沿わせて体重をかけ、もち米を臼に圧し付ける。適宜、ヘラやしゃもじを用いて裏返し、満遍なく手早く粘りを出すようにする。
- もち米全体がヘラやしゃもじで持ち上げたときに一体になる程度に粘りが出始めたらつき始めの目安とする。最低限度の状態としては杵でついたときに蒸した米が飛散しない程度である。この時の表面は米の形が識別できるものと餅状になったものが混ざった状態である。
- 日常的に目にする餅つきのように杵でつき始めるが、粘りが増すごとに杵と餅がくっつくので手水(てみず)する。手水とはあらかじめ桶に水を入れておき、手を水で濡らし餅の表面に水分を与えることである。なお、蒸して数分しか経過していないため、表面は炊きたてのご飯と同じで相当に熱く、餅の表面を濡れた手のひらで叩く程度で良い。
- 手水が多いと、餅をついている最中は柔らかいが、後で延ばしたり成形するときに固くなりやすく、先々カビが生えやすくなる。
- つき終わった餅は餅取り粉をまぶした板の上に置き、好みの形状に成形する。切餅であれば一定の大きさの伸し餅とした上で乾燥後に切り分け、丸餅であればつきたての餅を丸く成形した上で乾燥させる。
- 餅つきが終わった後の杵と臼はタワシ等で表面の餅を必ず取り去る。
なお、臼の大きさは、直径を尺貫法の寸でいう。
道具・機器
- 杵
- 臼(搗き臼)
- 臼には搗き臼(つきうす)と碾き臼(ひきうす)があるが、餅つきに用いるのは搗き臼である。木製のものと石製のものがある。
- 電動餅つき機
- 蒸したもち米を投入してつく工程のみを行う機器や、もち米を投入して蒸す工程からつく工程まで一連して行うことが可能な機器などがある。
- 餅切り器
- 切餅用
- 伸し餅をてこの原理を用いて切り切餅を作るための機器。のし餅切り器。押し切り。なお、かき餅用の餅切り器もある。
- 丸餅用
- つきたての餅を投入してハンドルを回して切りながら丸餅を作る機器。製餅機。
- 餅切り包丁
- 餅のし板
- 伸し餅を作る際に用いられる縦長の薄い容器。
- 餅取り盆(餅取り器)
- 餅を小さく分けていく際に用いられる皿。
練り餅
餅は中国・朝鮮・沖縄・東南アジアなどに多くの種類がある。古くは主に小麦を粉にして平たく固めてから加熱した粉食のことを指していたが、大麦、粟、トウモロコシなど他の食材を用いた粉食のことをも含めるようになった。ここでいう餅は、主にもち米を粉にしてから湯を加えて練る方法で作るものを指し、餅=搗き餅とする日本では一般に団子と呼ばれる。羽二重餅などの求肥餅や白玉やちまき、中国の「水磨年糕」(シュイモーニエンガオ shuǐmó niángāo)(zh)、韓国の「トック」(떡)などが挙げられる。これらの穀物の粉から作った餅の味付けには、甘味を利かせるものが主体であり、塩味も加減される事がある。
中華料理由来の月餅や饅頭は、小麦粉から作った「餅」が発達・改良されてきたものであり、麺類もその派生であるともいわれている。和菓子の中にも、「そば餅」などと、日本で一般的に饅頭と呼ぶ物を「餅」と呼んでいる例がある。
主な餅の種類
通常、餅の原料にはもち米が用いられるが、うるち米などが用いられることもある。もち米にうるち米を混ぜてついた餅を強餅(こわもち)という。
基本となるもち米をついて作る餅
- のし餅(延し餅・伸し餅)、角餅(切り餅)
- ついた餅を1.5cm前後の厚さに延ばし板状にした餅をのし餅と言う。好みの大きさに切って食べる。角餅と呼ばれるのはのし餅を切ったものを言う(切り餅とも)。
- なまこ餅
- ついた餅をナマコ状の半楕円形に伸ばした餅。包丁等で適当な厚さに切って食べる。焼いたり、油で揚げて食べる。関西では、ねこ餅とも言う。
- 丸餅
- ついた餅を丸く成形したもの。大きさや厚みによってそのまま食べたり、板状に切断して食べる。
鏡餅は、お供えとして大小の丸餅を二段に置いたもの。- あぶり餅
- 竹串にさして炭火であぶった餅。
- 鳥の子餅
- 鳥の子供の姿に似せてずん胴のひょうたん型に成形した餅。子供の一生になぞらえて一升餅で作る。餅を二分して食紅(しょくべに)で赤く着色したものを紅白餅として祝う風習があるが、一生を二分するのは不遜として紅白に分けない場合もある。
もち米をついて作る餅とその餅を利用した料理
赤福餅・御福餅・川渡餅・あんころ餅・ぼたもち
小豆でつつんだ餅。- 揚げ餅
餅を 1cm 内外のサイコロ状に切断、または前記鏡餅で砕いた破片等を油で揚げた餅。揚げた後に醤油・薬味などをまぶして食べる。
- 飴の餅
- 餅を水飴でくるんだもの。江戸時代に佐夜の中山で売られた。[11]
- あん餅・大福
- 中にあんこが入った餅。
- 磯辺餅(いそべもち)
- 切り餅を焼き、熱いうちに醤油を付けて海苔を巻いたもの。
かき餅(かきもち、欠餅)- 「おかき」。餅を薄く切断したものを天日で乾燥させ、焼いたもの。醤油等を塗る場合もある。古来は刃物を使わず槌や手で餅を欠いた。
- 柿餅
干し柿をもち米とともにつき、餅にしたもの。- 中国では円形に縦からつぶした干し柿自体を柿餅と称している。
- からみ餅
大根おろしにからませて食べる。- かんころ餅
さつまいもを輪切りにし湯がいて天日で干した物ともち米を一緒に蒸して、混ぜてついた黄色の餅(甘古呂餅)。
きなこ餅(安倍川もち)- 焼いた餅、煮た餅、もしくは蒸した餅に大豆を臼で引いて粉状にしたきな粉に砂糖を若干加えたものをまぶして(混ぜて)食べる。
- 巾着餅
- 油揚げの中に餅を入れたもの。おでんに入っている。
- 草餅
- ヨモギなどと共についた餅のことで、小豆あんを包むことが多い。うるち米を用いたものや、あんを包まず伸したものも草餅である。
- くるみ餅
- クルミを擦って作った餡をからめたもの
- 凍り餅・氷餅・凍み餅
- 凍らせた餅。[11]
- 笹餅
- 笹の葉で巻いた餅
- 酢餅
大根おろしとカボスまたは柚の果汁(ポン酢)にからませて食べる。一味唐辛子をかける人もいる。主に福岡県・大分県で食べられる。- ずんだ餅
- ゆでた枝豆をすりばち等を用いて潰したものにからめて食べる。
- 栃餅
栃の実を混ぜてついた茶色の餅。- 納豆餅
納豆をからませたもの。
花びら餅・御焼餅(おやきかちん)
ゴボウを薄くのばした餅でつつんだもの。- 菱餅
雛祭りの際に雛壇に飾る菱形の餅。- へぎ餅(おへぎ、方餅)
- 餅を薄く刃物で切断したものを天日で乾燥させ、焼いたもの。油で揚げる場合もある。現在はかき餅と混同されている事がある。
- 水餅
- 水に漬けて貯える餅。[11]
- バター餅
- バターや砂糖などを練りこんだ餅で、秋田県の郷土料理。
もち米の粉を練って作るもの
- 椿餅
- もち米を蒸してから乾燥し、軽く砕いた道明寺粉で作る餡入りの餅で、椿の葉ではさむ。
桜餅(道明寺)- もち米を蒸してから乾燥し、軽く砕いた道明寺粉で作る餡入りの餅で、塩漬けした桜の葉で包む。
羽二重餅、乳団子、走井餅- もち粉に砂糖や水飴を加えて練った柔らかい餅。
- 亥の子餅
亥の子に際して作られる餅菓子。さまざまな材料で作るが求肥が多い。餅の場合もある。- 芥子餅
- 求肥で餡をくるみ芥子の実をまぶしたもの。
ムーチー(鬼餅)- 水で練ったもち粉を月桃(さんにん)の葉で包んで蒸した沖縄の餅。
- 日本のちまき
- ササの葉で巻かれた餅。これに対して中国のちまきはおこわの一種である。
- トック
- 韓国の餅の一種。もち粉を練って、押し出し方式で作る。
煎餅(せんべい、いりもち)- 練って作った餅を薄く成形して天日で乾燥させ、焼いて醤油等を塗ったもの。
- 白玉
- ふところ餅
- 稲葉
- 草粿(チャウコエ)
- 台湾の草餅。「草仔粿」(チャウアコエ)ともいう。カメの形に作る「烏草龜粿」(オーチャウクイコエ)もある。客家の「艾粄」も同様。
- 炸麻糬(チャーモワチー)
- 台湾の揚げ餅。
- 紅龜粿(アンクイコエ)
- 台湾の赤く染めてカメに似た形に作るもの。
うるち米を使うもの
五平餅(五兵衛餅、御幣餅、吾平餅)- うるち米の餅を板に付け火であぶり、味噌を塗ったもの。
- 月見団子
- ピンポン玉程度の大きさの丸餅をピラミッド状の三角錐に積み、月に供えてから食べる。地域により形状などに違いがある。
- 串団子
- 一口で食べられる大きさの団子状に成形した丸餅数個を串に刺したものを食べる。生のまま、または焼いたものに醤油・砂糖・片栗粉で作った甘辛いタレをからめたみたらし団子(御手洗串団子)や小豆・枝豆などのつぶ餡やこし餡を付けて食べる。醤油を塗って焼いた串団子に海苔を巻いたものを磯辺団子という。
- 牛蒡餅
- うるち米の餅と黒砂糖などを混ぜてケシの実をまぶした餅。
- 柏餅
- 柏の葉で包んだ餅。小豆こしあん、味噌あんなどを包む。
- 鶴の子餅
- ほぼ鳥の子餅と同じ形状で縁起の良い鶴の卵を象ったもの。紅白の色をしている。すあまで作るものを鶴の子餅と称することが多い。
- うる餅、あらかね餅、ぼろ餅、おふく、こごめ餅、たがね餅、ごんだ餅、どや餅
- もち米にうるち米を混ぜてついた餅。地方により様々な名称で呼ばれ、味や形も様々である。[11]
- 小米餅
- もち米にうるち米を混ぜてつき、米粒を残したもの。
- やしょうま
- 信州のカラフルな米粉餅で、名前の起源については釈迦弟子のヤショを偲ぶ、釈迦の奥様ヤソダラ姫に因む、あるいは痩せ馬の姿に似ているからなど複数の説がある[12]。
デンプンを用いるもの
- 葛餅
クズのデンプンや、代用品としてのジャガイモデンプンなどを用いる。- わらびもち
ワラビのデンプンを用いる。- 蘇鉄餅
ソテツのデンプンを用いる。
小麦粉を用いるもの
- 焼皮桜餅(長命寺)
小麦粉に寒梅粉(もち米の加工品)を加えて、鉄板で焼いた皮(煎餅の一種)で餡をはさみ、塩漬けした桜の葉で包む。- 月餅
- 中国の中秋節のお菓子。皮は小麦粉。
くず餅(久寿餅)- 小麦粉の澱粉質を乳酸発酵した物を蒸し上げて作る。主に関東地区で食べられている。
その他の材料のもの
- 雪餅
- つくね芋でつくった白いきんとん。冬の和菓子。
栃餅(とちもち)・藁餅など- 木の実などの灰汁(あく)を抜くために数日間から一週間程度水にさらした後、粉状にして蒸してついたもの。
- 粟餅
粟をついて作ったもの。
主なつき餅料理
- 焼き餅
- 雑煮
汁粉・おしるこ- 小豆を煮た汁の中に餅を入れたもの。前記の鏡開きのときに食べる。
大福餅・餡餅(あん餅)- 餅の中に具として餡を入れて包んだもの。餅をつく時に豆を入れたものは豆大福餅と呼ぶ。餅が柔らかいうちはそのまま、固くなった場合は焼いたり油で揚げて食べる。
- 啜り餅(すすりもち)
- 水気を多く入れて柔らかくついた餅を水を張ったたらい等に入れて、手で細長くひも状にしてすすりながら食べるが、慣れないと危険。
- 小袖餅
- 宇土餅
- 炒年糕
- 上海料理
- 凍み餅
高野豆腐のように寒中に干した餅。草餅が使われることが多く色は緑色。保存食やみやげ物として使われる。
からめるもの
- 調味料類
- 砂糖醤油、しょうが醤油、バター(マーガリン)
- 野菜(植物)類
- 大根おろし、納豆、きな粉、ずんだ、ゴマ、エゴマ、クルミ、小豆餡
つき込むもの
- 豆類
- 大豆、ゴマ
- エビ
- 植物の葉など
- ヨモギ、ゴボウの葉
非常食
- 砂糖を加えてついた餅
- 寒中でもすっかり硬くはならないので、昔は猟師や登山者の食料として重宝された。
乾燥餅
- 現代において、冷たい水でも簡単に柔らかく戻るように加工された餅。長期保存可能なレトルト食品として販売されている。
食べない餅
- 花餅
- 高山などの枝に餅を刺した正月飾り。
事故
粘着力・付着力が高く、噛み切りにくい餅は、飲み込む力の低下した高齢者などにとって極めて危険性が高い食物である。
餅を気道に詰まらせることによる窒息死で、毎年多数の死者を出していることが知られている。年間の詳しい死者数は不明であるが、厚生労働省の調査では、2006年中に食品を原因とする窒息で救命救急センターなどに搬送された事例は、把握できた計803件のうち、餅は168件に上った[13]。また、1996年1月の1ヵ月間だけで208人が死んでいるという説もある[14]。内閣府の食品安全委員会による調査によれば、餅を1億人が口に入れたと仮定した場合に最大7.6人の頻度で窒息による死亡事故が発生するリスクがあるとされ、これはワースト2位以下の飴(2.7人)やこんにゃくゼリー(0.33人)の死亡リスクを大きく上回る[15]。餅は摂氏50-60度では柔らかいが、体温に近い40度になると硬くなって付着性も増加するため、窒息の要因になると推察されている。
ただし日本においては、伝統食である餅が窒息リスクのある危険な食べ物であることは常識として広く周知されていることから[16]、餅による窒息事故は消費者の自己責任であると捉えられており、流通を規制したり、ことさら危険性を啓蒙したりするような動きはなく、こんにゃくゼリーに課せられているような警告文の表示義務もない。消費者庁もこんにゃくゼリーのように規制の動きを強めることはなく、注意喚起を促すPDFファイルを配布する程度にとどまっている[17]。
正月三が日においては、必ず餅による窒息を原因とした救急車の出動があるといわれており、消防機関では注意を呼び掛けている。そういった事故を減らすためには、「自分は大丈夫」といった油断を避けて、餅は小さく少量にわけ、口の中を十分に湿らせるようにし、かつおしゃべりしながら食べない事ともされる[18]。喉に詰まらせた餅を掃除機で吸い出すという方法も知られているが、喉や肺を痛める場合もあり安全な方法ではない[18]。
奇薬(民間薬)としては、餅を詰まらせた場合に、鶏の鶏冠の血を飲ませるという対処法がある[19][20]。
なお、もち米に普通の米(うるち米)を5:5に配合することにより粘度を下げた餅は各地にある(上記 あらかね餅を参照)。
製造
最大手の企業としては、越後製菓株式会社、佐藤食品工業株式会社などがあり、他にも中小企業、商店、家庭など、製造方法が単純な事から幅広い各所で製造されている。
餅に関する慣用表現
- 諺
- 餅は餅屋 - 何事も専門家がおり、素人にはかなわない。
- 絵に描いた餅、畫餅充饑 - 餅の絵はどれほど巧みに描かれていても食べられないことから、実現性・実用性のない計画のこと。
- 棚から牡丹餅 - 思いがけない幸運。「棚ぼた」とも略される。
- 格言
- 魚は大名に焼かせよ、餅は乞食に焼かせよ
- 魚はしっかり火が通るまでじっくりと焼いてから裏返すと皮が破れず見栄えよく焼くことができる。餅は頻繁にひっくり返して焼くと焦げ付かせずにきれいに焼くことができる。
- 転じて、仕事には適任者を充てよという意味でも使われる。
- 故事
織田がつき 羽柴がこねし 天下餅 座りしままに 食ふは徳川
織豊時代から江戸幕府成立への政権の移り変わりを餅つきに喩えた狂歌。
- 餅は冷えてから買え
井原西鶴『日本永代蔵』より。搗きたての餅は水分を多く含み、冷えて固まると重量が減るので、搗きたてを買うと損をする。吝嗇のたとえ。
- 比喩
- 餅の形状、性質を「もちもち」、「もっちり」等の擬態語で表現することがあり、餅以外の物にも使うことがある。用例:「もちもちとした食感」等。
脚注
- 注
^ 餅つきの様子を表す擬音は「ペッタン」や「ペッタンコ」。
- 出典
- ^ abコトバンク『日本大百科全書(ニッポニカ)』 - 「粢」
^ 篠田統『中国食物史』柴田書店、1976年、P54-56
^ コトバンク『世界大百科事典 第2版 』 -「餅」
^ 古進編,『客家人』p177,中国三峡出版社,1994,北京
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^ 方言によっては「餅をかつ」という。
^ 広辞苑 第五版【餅】
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小林未来 (2010年1月14日). “こんにゃくゼリー「事故頻度、アメと同等」 食品安全委”. 朝日新聞 朝刊13版 (朝日新聞社): p. 29面
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^ 長友千代治『重宝記の調方記: 生活史百科事典発掘』 2005年
^ 耳嚢 巻之四
関連項目
- 正月
望月 - 餅搗き(もちづき)の言葉が掛かる。
鏡餅
- 鏡開き
- 雑煮
- 餅まき
- モッフル
- 力うどん
お年玉 - かつての日本のお年玉はお餅だった
耳塞ぎ餅 - 餅が使用される死に関する慣習
恵利原早餅つき - 三重県に伝わる高速で餅をつく文化- マッツァー
参考文献
- 古川瑞昌『餅博物誌』(『日本の食文化体系第19巻』)東京書房社1982年
外部リンク
全国餅工業協同組合・100%お餅ミュージアム (もち製造業者団体のWebサイト)- 餅学のすすめ
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